鉄分は、本来1日に10mg(体内に吸収されるのは1~2mg程度)の鉄分を補給していれば、身体のなかでリサイクルされて1日に必要な栄養素が補えるとされています。
ですが、鉄の需要が増える成長期や生理時の出血。妊娠時や授乳期には「身体のなかでリサイクルされる鉄分」と、「1日あたり食事から摂取できる1~2mgの鉄分」だけでは足りず、体内の鉄分収支がマイナスになりやすくなります。
鉄分不足による貧血は急に起こることはありませんが、慢性的な鉄分不足を放置していると貯蔵鉄が不足して貧血の症状が出やすい体質になります。
貧血は症状がある程度進行するまでは自覚症状がない場合も多く、健康診断で貧血と診断されて気づく方もいらっしゃいます。

この記事で紹介すること
①【貧血の市販薬を試す前に知っていて欲しいこと】②【鉄欠乏性貧血に必要な栄養素と市販薬の選び方】をご紹介しています(※目次の青色リンクをタップすることで目的の場所までジャンプできます)
市販の貧血薬では治らない鉄欠乏性貧血があります

市販薬の購入を迷っている方の多くは、「もし私に効かなかったらどうしよう」といった不安から二の足を踏んでいる方も多いです。
女性の貧血の9割は、「鉄分不足を解消」することによって回復する鉄欠乏性貧血がほとんどです。鉄欠乏性貧血の大半は、鉄分をしっかりと補給してあげればぐっとラクになります。
ただし、同じ鉄欠乏性貧血でも、「重度の場合」は市販薬の造血効果が追いつかないので効果が実感できません。

女性は生理で鉄分を失うので基準値が低くなりがちですが、月経過多など鉄の流出量が多すぎる場合は市販薬で対応できません。
月経過多の症状が続く場合は、婦人系の病気など何らかの原因を抱えていることがあります。
1週間以上出血が長く続く場合や経血量が多いと不安に感じている方は婦人科を受診されることをおすすめします。
また、貧血には鉄欠乏性貧血のほかに「再生不良性貧血」や「悪性貧血」、「溶血性貧血」など市販薬で対応できる範囲を超えた貧血もあります。
関連記事市販の貧血の薬・鉄剤(医薬品)で対応できる許容範囲を超えている貧血について(タップorクリックで関連記事に移動します)
市販の貧血薬で対処できない鉄欠乏性貧血の一例
- 過多月経が原因の大量出血・消化管からの出血・血液の病気、腎臓の病気など
1.生理の量が多すぎる過多月経が原因で必要以上に鉄を失っている場合

2.栄養素の消化・吸収が阻害される吸収不良症候群や、子宮筋腫・子宮内膜症などの婦人科疾患、がん・消化管潰瘍、痔ろうなどの慢性出血が常態化している場合

3.妊婦さんの貧血薬については、「市販薬では鉄分補給が追いつかない」場合がありますのでお医者さんの判断に従ってください。妊娠中は、胎児の成育のために鉄分の必要量が大幅に増えます。

市販の貧血薬で対処できる鉄欠乏性貧血
食が細くて食べれない、またはダイエット・偏食で鉄の摂取量が少ない場合。鉄分の需要が増える成長期や授乳期の貧血(市販の貧血薬には、授乳中に服用してはいけない成分は入っていません)
例えば、「成長期」は身体を作るために大人以上の鉄を必要とします。「授乳期」には母乳に栄養素が優先して使われますので、お母さんに回ってくる鉄分が少なくなります。
また、鉄分そのものが減っていく生理中はしっかり食べていても必要な鉄分を満たすことが難しくなります。月経による出血では、多い方だと50mg以上の鉄分を失います。

例えば、食事から毎日10mg(吸収されるのは1~2mgです)の鉄分を摂取している場合でも、1ヵ月で30~60mg(30日×1~2mg)にしかなりません。
生理の分(50mg以上)を引くと体内で必要な鉄分が足りず。食事だけでは鉄分収⽀がマイナスの「かくれ貧⾎」になる可能性があります。
貯蔵鉄の回復には、医薬品で食事で満たしきれない鉄を補うなど。「身体が必要としている鉄分」と「身体のなかで消費されている鉄分」のバランスを正常に持っていくことが1番の近道になります。
関連記事【ヘモグロビン・フェリチン】貧血の症状がない鉄不足と鉄欠乏性貧血の違いについて(タップorクリックで関連記事に移動します)
代表的な鉄剤の違いと貧血薬の選び方

市販の貧血薬は、赤血球・ヘモグロビンを増やすために必要な栄養素(鉄・たんぱく質・ビタミンC・B6・B12・葉酸)のうち。食事だけでは不足がちな「鉄と造血のビタミン」を補えるように設計されています。
例えば、市販薬は吸収の悪い鉄分を補給するために、「ファイチ・マスチゲン錠・ヘマニック」には溶性ピロリン酸第二鉄。
「エミネトン」にはフマル酸第一鉄という鉄剤が配合されています(ピロリン酸やフマル酸は国から認可された鉄剤を安定させるための食品添加物)
2種類の鉄剤の違いは、フマル酸第一鉄より身体に吸収されるのが速いのが溶性ピロリン酸第二鉄。鉄分がゆっくり溶け出す分だけ消化器官への負担が軽減されているのがフマル酸第一鉄です。
ファイチは造血のビタミン(ビタミンB12)の働きをUPさせる葉酸が多めに入っていて、マスチゲン錠は鉄分の吸収を高めて赤血球の数を増やす成分がバランスよく配合されています。
エミネトンは医薬品の鉄剤には珍しく、ご自身の体質に合わせて飲む錠数を調整できる貧血薬です。また、造血のビタミン&微量ミネラル&胃粘膜を保護する成分も配合されています。

関連記事【市販の鉄剤がダメな方に】鉄欠乏性貧血に使える漢方の医薬品(タップorクリックで関連記事に移動)
マスチゲン錠なら1日1粒で鉄とビタミンの不足分を摂ることができます
- 鉄分含有量・・・1錠中に鉄として10mgの鉄分配合( ※溶性ピロリン酸第二鉄79.5mgという表記は鉄と食品添加物の合計です)
マスチゲン錠は、食事だけでは満たしきれない鉄分を補給して、造血のビタミンと呼ばれるビタミンB12と葉酸が赤血球の材料(へモグロビン)を増やす手助けをしてくれます。
また、鉄を体内に吸収しやすい形(ヘム鉄化)するビタミンCや、強い抗酸化力で赤血球の数を増やすのに役立つビタミンEもバランスよく摂ることができます。
マスチゲン錠は1〜2ヶ月毎日かかさず飲み続けることで鉄分収支のマイナスが改善されていきます。鉄分不足が解消されていくと、
「寝ても寝ても眠くてしょうがないと思っていたのに、マスチゲン飲んだら嘘みたいに日中眠くないし、ダルくない」「前より朝が起きれるようになった」「寝起きの不快感と頭痛がない分だけマシ」
「マスチゲンを始める前は生理後もダルさが回復せず寝込むことが多かったのに、今は体力・集中力ともに回復するのが早い気がする」など。鉄分不足が原因で起こっていた貧血の症状が楽になります。

マスチゲン錠の対象年齢は15歳以上です。お子さんの貧血には「【第2類医薬品】マスチゲン錠 8〜14歳用(60錠)【マスチゲン】をご利用ください。
関連記事マスチゲン錠とマスチゲンS錠の違いと飲み始めてから効果が出るまでの目安(タップorクリックで関連記事に移動)
ファイチは鉄の匂いや味がしないので飲みやすく続けやすい貧血薬です
- 鉄分含有量・・・溶性ピロリン酸第二鉄79.5mg(2錠中に10mgの鉄分を配合しています)
身体に不足している鉄分をチャージする貧血薬ですが、鉄剤は味や匂いのせいで気持ち悪くなり途中でやめてしまうことも多いおくすりです。
鉄剤の胃から上がってくる独特の匂いに敏感で、「おえっ」とえずきそうになった経験がある人は、ファイチを選んでみてください。
小林製薬のファイチは、フィルムコーティング錠に包まれた鉄臭さのカットされた鉄剤で、お子さんでも抵抗なく飲みやすいお薬です(8歳から服用できます)
ファイチは、鉄欠乏性貧血の改善に欠かせない「鉄とビタミンB12・葉酸(造血のビタミン)」の栄養素がしっかり配合された医薬品です。
ビタミンB12は、動物性食品から摂取するビタミンのひとつで赤血球の生成を手助けしてくれるビタミンです。葉酸はビタミンB12のはたらきを高めてくれる栄養素で、ふたつあわせて造血のビタミンと呼びます。
葉物系に多く含まれる葉酸は調理ロスによる損失が多いので、ファイチはマスチゲン錠より葉酸を多く配合しています。ビタミンB12との相乗効果で吸収した鉄分を赤血球やヘモグロビンに造り変えるための手助けをしてくれます。

関連記事【ファイチの疑問】 効果がでるまでの期間はどのくらい?毎日飲むことによる鉄の過剰症が心配という方に(タップorクリックで関連記事に移動)
ファイチとファイチビューティオールの違いについて
- ファイチビューティオールは、2025年4月23日に小林製薬から販売開始された従来のファイチの成分にビタミンC、ビタミンEを加えた新処方の貧血改善薬です

貧血改善に必要な栄養素には、鉄・たんぱく質・ビタミンC・B6・B12・葉酸などがありますが、たんぱく質や一部のビタミンは日々の食事で必要量を満たせるため、
ファイチには、赤血球の材料になるヘモグロビンを増やすために必要な鉄分と、骨髄で赤血球のもととなる赤芽球が成熟するために不可欠なビタミンB12と葉酸が配合されていました。
ファイチビューティオールは、従来のファイチに鉄分の吸収を高めるビタミンCと、赤血球の生成を手助けしてくれるビタミンEを加えることにより、貧血対策により効果的な医薬品になっています。
ビタミンCとEを追加することによって、ファイチビューティオールは貧血改善薬として比べられるマスチゲン錠と同一成分になりました(葉酸もマスチゲン錠と同量に変更)
マスチゲン錠との違いは、ファイチビューティオールは腸溶性糖衣錠に比べて鉄剤独特の味や匂いがしない工夫がされた腸溶性フィルム錠を採用していることです(マスチゲン錠は腸溶性糖衣錠)
腸溶性フィルム錠は、胃に負担をかけやすい鉄剤を胃で溶けず腸まで運んで溶けるように工夫されたフィルムコーティングを施した錠剤になります。
ファイチとヘマニックの違いはフィルム錠と糖衣錠
- 鉄分含有量・・・ヘマニックはファイチと同じ溶性ピロリン酸第二鉄を79.5mg(2錠中に10mgの鉄分を配合しています)
ファイチ・マスチゲン錠・ヘマニックは、鉄剤の刺激を軽減するために「胃で溶けず腸から吸収される錠剤(腸溶錠)」を採用しています。
全薬工業さんのヘマニックは発売当時、市販の鉄剤では他社に先駆けて胃で溶けず腸で溶ける腸溶性糖衣錠をはじめて採用した貧血薬です。
腸溶錠は「鉄分の吸収率が若干落ちる」デメリットはありますが、むき出しの鉄剤より胃腸に負担が少なくなるメリットがあります。
ファイチとヘマニックは、1日1回2錠服用で鉄剤と造血のビタミンの配合量も同じですが、鉄の味や匂いがしない「腸溶性フィルム錠(ファイチ)」か「腸溶性糖衣錠(ヘマニック)」の違いがあります。
ネット通販の販売価格によっては、ヘマニックは1錠あたりのコスパがファイチより安価な場合があります。

参考リンク【Amazon】
- 【第2類医薬品】ヘマニック 90錠(45日分)
- 【第2類医薬品】ヘマニック 180錠(90日分)
エミネトンは体質的にファイチ・マスチゲン・ヘマニックがあわなかった方に
- 鉄分含有量・・・フマル酸第一鉄90mg(鉄換算で1錠あたり29.5mgの鉄分を配合しています。
溶性ピロリン酸第二鉄の吸収の良さから、胃がムカムカしてどうしても駄目なひとには、鉄剤の刺激から胃を保護する胃粘膜保護成分も配合されたエミネトン(フマル酸第一鉄配合)を選んでみてください。
フマル酸第一鉄は、鉄分がゆっくりと溶け出す性質から、溶性ピロリン酸第二鉄と比べて胃腸にかかる負担感が軽減されています(※ほかの鉄剤に比べて吸収されるスピードが穏やかなだけで、吸収率そのものが低いという訳ではありません)
フマル酸第一鉄には貯蔵鉄を増やす効果があり、エミネトンにはフマル酸第一鉄の吸収を高めるビタミンC、造血作用のあるビタミンB6・B12・葉酸、貧血改善に大切な微量ミネラルがしっかり配合されています。
ほかの市販薬と比べても鉄分が多く含まれていますので、身体を作るために鉄分の需要が増える「成長期のお子さん」と、母乳に鉄分を取られがちな「授乳中のお母さん」に選んでもらいたい増血薬です。

対象年齢制限:エミネトンは7歳未満のお子さんには服用させないでください。
エミネトンに配合されているマンガン・コバルト・銅など微量ミネラルは有害ですか?

マンガン・コバルト・銅など微量ミネラルは有害な成分と誤解されがちですが、微量ミネラルは貧血改善を手助けしてくれる重要な栄養素です。
例えば、銅はヘモグロビンの生産過程で鉄分の代謝分解や輸送に重要な役割を持ちます。コバルトは骨髄での造血作用を高めるビタミンB12の構成成分です。
マンガンは糖質・脂質・たんぱく質の三大栄養素の代謝分解を助ける酵素の手助けします。
日本臓器製薬のマスチゲンS錠(マスチゲン錠の旧製品)にも、貧血の数値を改善する目的でマンガン・コバルト・銅など微量ミネラルが配合されていました。
エミネトンを飲んだら便が真っ黒になる理由は?

市販の鉄剤を飲んだ翌日に急に便が黒くなって驚かれる方がいらっしゃいますが、「いつもより色の濃い黒色便」は身体に悪影響を与えるお薬の副作用ではありません。
エミネトンに限らず、ファイチ・マスチゲン・ヘマニックなど。市販の鉄剤(医薬品)やサプリは、吸収しきれなかった鉄分が便と一緒に排出されます。
特に鉄分は、私たちの身体の調子を整えるのに欠かせない微量ミネラルのなかでも吸収率が悪く。ほとんどの鉄は使われずに便と一緒に出ていってしまいます。
鉄分を多く含んだ黒色便は吸収しきれなかった鉄分の色なので心配しないでください(佐藤製薬のエミネトンだけでなくファイチ・マスチゲン・ヘマニックにも起こります)
関連記事【ヘム鉄・非ヘム鉄の吸収率】サプリメントと医薬品の鉄剤で迷われている方に(タップorクリックで関連記事に移動します)
ご参考になれば幸いです