貧血がひどくて鉄の吸収率について調べられた方のなかには、体内での吸収率が「ヘム鉄が15~25%」なのに対して、「非ヘム鉄が」約2~5%と差があるのを理由に、
医薬品ではなく「ヘム鉄と記載されたサプリメントを摂った方が鉄欠乏性貧血が楽になりませんか」と疑問を抱かれる方がいらっしゃいます。
ヘム鉄と非ヘム鉄の吸収率の違い
よく鉄不足を予防するためには、吸収性の高いヘム鉄が豊富な食材を中心に食事を摂ってくださいと言われますよね。
一般的には、私たち日本人の食生活で摂取する「鉄の8割以上が吸収率の低い非ヘム鉄」に偏りがちなのが理由なのですが、
ヘム鉄は体内にそのまま吸収できるのに対して、⾮ヘム鉄はビタミンCや消化酵素のちからを借りてヘム鉄に還元されて吸収されます。
ヘム鉄が動物性食材に多い理由
ヘム鉄について調べられた方のなかには、⾁や⿂にはヘム鉄が多くて、植物性食材には⾮ヘム鉄が多いと認識されている方も多いのですが、
動物性食材にヘム鉄が多いのは、動物が生命活動に利用するためにヘム鉄を体内に蓄えていて。動物性食材を調理することでそのヘム鉄を摂取できるためです。
ただし、野菜や⾖類のメニューを避けて、⾁や⿂な動物性食材に偏った献立を立てると、鉄の吸収に役立つビタミンCや消化酵素が減ります。
鉄分を⾷品から摂る場合は、ヘム鉄と非ヘム鉄をバランスよく。五大栄養素と呼ばれるタンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラルと一緒に摂ってください。
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医薬品の鉄剤とサプリメントの鉄剤の違い
少し難しい話になりますが、サプリメントに配合されているヘム鉄は2価鉄。ファイチやマスチゲンには非ヘム鉄の溶性ピロリン酸第二鉄という3価鉄が採用されています。
摂取した鉄分が赤血球の材料になるためには、骨髄に運ばれる必要があります(赤血球は骨髄で造られて全身に酸素と栄養を運ぶ役割を担っています)
サプリメントに配合されているヘム鉄は、赤血球の生産工場の骨髄に運ばれるには体内でトランスフェリンという成分と結合して3価鉄に変換される必要があります。
一方で、市販薬は3価鉄に変換された鉄剤を使用していますので、ヘム鉄のように2価鉄→3価鉄にする必要がなく。
摂取した鉄分は、すぐに骨髄に運ばれ赤血球やヘモグロビンの材料として使われます。
ヘム鉄のサプリメントの吸収率
鉄のサプリメントといえばヘム鉄に代表される有機鉄ですが、有機鉄は高価なため食品への添加が限られます。
また、ヘム鉄は抽出された原料の精製が甘いと加熱による変性が起きて「吸収性そのものが良くない」こともあります。
肉や魚などの動物性食品に含まれるヘム鉄は、胃壁や腸管を荒らしにくく身体に優しい栄養素ですが、ヘム鉄のサプリメントとまったく同じではありません。
薬は副作用が心配なので健康食品を選びたいという方は、消費者庁(国の機関)が出している「健康食品Q&A」を目を通してみてください。
鉄剤にサプリメントと医薬品の2種類がある理由
明治時代に薬事法(現・薬機法)を制定する際に、日本人の栄養状態の悪さを重く見た政府が、栄養素であるビタミンやミネラルを医薬品指定した経緯があります。
生理のときなどに貧血予防としてサプリメントを選ばれる方もいらっしゃいますが、市販の鉄剤も鉄欠乏性貧血と診断されていなくても服用することができます。
ただし、鉄分の補給を目的にヘム鉄のサプリメントと医薬品の鉄剤を同時に服用するのは止めてください。
栄養機能食品は、医薬品と違って副作用がないと誤解される方がいらっしゃいますがそれは間違いです。
ヘム鉄以外のサプリメントについて
鉄分を補給できるサプリメントには、「ピロリン酸第二鉄(不溶性鉄)やクエン酸鉄ナトリウム(水溶性鉄)」など、市販薬と似た食品添加物(鉄分)が配合されています。
同じピロリン酸第二鉄でも、市販薬はNDS化により吸収性を改善した鉄剤を使用しています。安価な鉄剤のなかには、市販薬のように「胃に負担をかけない加工」が未処理なものもあります。
特に、むき出しのまま吸収された未加工の非ヘム鉄は、鉄が胃壁や腸管を荒らすリスクが高まりますので注意が必要です。
まとめサプリメントと医薬品の鉄剤の違い
ヘム鉄は、非ヘム鉄に比べて腸から血管内に吸収される吸収率は高いです。ですが、ヘム鉄は2価鉄→3価鉄に変換されないと赤血球の生産工場の骨髄に運ばれにくい性質があります。
ファイチやマスチゲンなど市販の鉄剤は、最初から3価鉄に変換された鉄分です。吸収されたあとは骨髄にすぐに運ばれて赤血球やヘモグロビンを造る材料になります。
必ずしも市販薬の方がサプリに比べて優れている訳ではありませんが、すでに鉄欠乏性貧血の症状が見られている場合は、効能効果が実証されている医薬品をおすすめします。
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ご参考になれば幸いです