口内炎・口唇ヘルペスのおくすり

市販の抗ウイルス薬を口唇ヘルペスと診断されていない人が購入できない理由

2020-08-05

薬局でヘルペスの市販薬を購入しようとして、「病院で口唇ヘルペスと診断されたことのない方にはお薬をお売りすることができません」と断られたことはありませんか。

口唇ヘルペスの市販薬は、過去に口唇ヘルペスと診断・治療を受けた方の再発治療薬です。ヘルペスウイルスには、口唇ヘルペス以外のウイルスも存在するため、診断されていない方は使用できません。

また、アクチビア軟膏ヘルペシアクリーム・アラセナS・ヒフールACなど。市販の抗ウイルス薬は、口唇ヘルペスと診断されていない方は、薬局の店頭でもネット通販でも購入することができません。

この記事では、自己判断による口唇ヘルペスの抗ウイルス薬の使用がダメな理由をご紹介します。

口唇ヘルペスの診断を受けていない人が抗ウイルス薬を使ってはいけない理由

  • 同じヘルペスウイルスでも口唇ヘルペスと種類の異なるヘルペスウイルスが存在します

ヘルペスウイルスには、水疱瘡(みずぼうそう)の原因となるウイルスだったり、帯状疱疹の原因となるウイルスなど。口唇ヘルペス(単純疱疹)とヘルペスウイルスの種類が異なる皮膚疾患があります。

また、皮膚疾患のなかには口唇ヘルペスと似た症状の病気もあります。自己判断で口唇ヘルペスの市販薬を使用した場合、正しい治療ができず類似疾患の症状を悪化させる原因になります。

例えば、ヘルペスウイルスには、「単純へルペスウイルスⅠ型」「同Ⅱ型」「水痘・帯状疱疹ウイルス」「エブスタイン・バーウイルス」「サイトメガロウイルス」「ヒトヘルペスウイルス6」「同7型」「同8型」など。様々なタイプのヘルペスウイルスが存在します。

口唇ヘルペスの医薬品の自己判断での使用は、他の病気の悪化やお薬の副作用を見逃すリスクがあります。

医療用医薬品のアシクロビルと市販薬のアシクロビルの効き目の違い

  • アクチビア軟膏・ヘルペシアクリーム・ヒフールAC・アラセナS・アラセナSクリームは口唇ヘルペスにしか利用できません

市販薬では口唇ヘルペス用のお薬としてアシクロビルとビダラビンの2つの成分が配合されていますが、医療用の成分と違って口唇ヘルペスの使用にしか許可が下りていません。

例えば、医療用医薬品のアシクロビルの場合は、口唇ヘルペス、角膜ヘルペス、陰部ヘルペス、水痘・帯状疱疹に効能効果が認められています。

ですが同じアシクロビルでも、市販のアシクロビルを配合した塗り薬は口唇ヘルペス以外のヘルペスには使用することが認められていません(症状の判断が困難なため)

抗ウイルス薬は、あくまでも身体のなかに潜んでいるヘルペスウイルスの増殖をおさえる成分です。口唇ヘルペスの市販薬は原因となるウイルス種類が違う場合は効果を実感できません。

ヘルペスの市販薬(塗り薬)は、口唇ヘルペスと診断された方だけが使える再発治療薬です。

口唇ヘルペスの市販薬

  • アクチビア軟膏・ヘルペシアクリーム・ヒフールAC(アシクロビル)
  • アラセナS・アラセナSクリーム(ビダラビン)

アシクロビルとビダラビンの違い【作用機序】

  • 抗ウイルス薬(アシクロビル・ビダラビン)はヘルペスウイルスを殺す成分ではありません

ウイルスは宿主である人の細胞に侵入し寄生することにより増殖を繰り返します。ヘルペスのお薬(抗ウイルス薬)は、ウイルスのDNAに働きかけて増殖をおさえるお薬です。

例えば、アシクロビルはチミジンキナーゼ(酵素)と反応し、アシクロビル三リン酸という物質になります。このアシクロビル三リン酸がウイルスに取り込まれると、ウイルスはDNAを複製できなくなります。

体内に寄生したウイルスが一定数増殖した後では効果が薄いので、ウイルスの少ない発症初期のうちにウイルスの増殖メカニズムを止めてウイルスを除去します(一度感染したウイルスは細胞内に残りつづけるため完全には除去しきれません)

ビダラビンについても、ウイルスが自己増殖を繰り返さないようにDNAの伸張をおさえ、ウイルス自体の材料である4種類のDNA鎖やたんぱく質の合成を阻みウイルスの増殖をおさえ込みます。

ビダラビンとアシクロビルはどちらが強いというわけではなく、ウイルスに薬剤に対する耐性があった場合。別の作用機序で対抗するために2種類のお薬を用意しています。

 

 

ご参考になれば幸いです

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