風邪のおくすり

春風邪には葛根湯でなく身体にこもった熱を逃がす麻杏石甘湯

2017-05-05

春の陽気とともに気温が上がり始めるこの時期ですが、つい薄着で過ごしていたら「朝鼻の奥が痛くなってて風邪をひいた」経験ってありませんか。

冬の冷たい空気に当てられて罹患する風邪と違って、春風邪は冬の寒さの影響が春先に現れる症状です。

春にひく風邪と気温の低い冬に引く風邪では対処法が違います。冬にひく風邪は、外気温によって熱を奪われやすいので身体を温める必要があります。

反対に春風邪は身体に熱がこもりやすいので、身体にこもった熱を逃がしてあげる必要があります。

同じ風邪でも「春風邪」と「冬風邪」では対処法を間違うと症状が長引く場合があります。

この記事では、春風邪に最適な「熱を逃がして治す麻杏石甘湯(まきょうかんせきとう)」をご紹介します。

春風邪に効く身体を温める葛根湯を選ばないほうがよい理由

  • 風邪に効く漢方薬には「身体を温める効果」と「身体にこもった熱を冷ます」効果に優れる2種類のタイプがあります。
風邪ウイルスは、悪寒など身体を冷やす性質を持っています。

葛根湯は身体を温めることによって抵抗力を上げてウイルスを追い出すので、冬に向く漢方薬の代表格と言えます。

ですが春風邪は冬と比べて気温が高く、冬場に大活躍した葛根湯は身体を温め続ける効果が強いため、春風邪に使うと熱が籠って余計に症状が悪化する場合があります。

春風邪は、「熱っぽく感じがする」「咳がしつこく止まらない」「黄色い鼻水や痰などが多く出る」など。高熱・寒気など風邪のひきはじめより後半の症状が長引くのが春風邪の特徴です。時間の経過とともに身体のなかで「熱」を溜めやすくなります。

身体のなかに『熱』がこもると、身体は熱を逃がそうと咳やたんなどが出やすくなります。これは鼻腔や上気道の炎症が原因で、黄色い鼻水や痰が絡むとそれを排出しようと「身体の防御反応」で起こります。

身体に熱がこもりやすい春風邪は「熱を逃がしてあげる手伝い」をしてくれる漢方薬を選んでください。

葛根湯や麻黄湯に含まれる身体を温めてくれる生薬の組み合わせ

  • 葛根湯のほかに寒い時期の風邪に用いられる代表的な漢方薬に麻黄湯があります。
麻黄湯は葛根湯よりも身体を温める効果が強く、葛根湯よりも風邪の症状が重い場合に用いられます。

冬風邪では身体を温めることによってウイルスへの抵抗力を高めることで風邪を治します。

麻黄湯は発熱しているのに身体が震えるくらい悪寒が強く、咳やふしぶしの痛みなどの症状がある風邪におすすめの漢方薬です。

麻黄湯は桂皮、麻黄、甘草、杏仁。葛根湯には、麻黄湯と同じ、桂皮、麻黄、甘草の他に、葛根、生姜、芍薬、大棗の4つの計7つの生薬が配合されている漢方薬です。

麻黄湯は葛根湯よりも配合されている生薬の数は少ないですが、身体をしっかり温め、発汗を促す効果の高い⿇⻩と桂枝が配合されています。

春風邪の身体にこもった熱を逃がす麻杏甘石湯

  • 麻杏石甘湯は身体にこもった「熱」を冷まして症状を楽にしてくれます。温病の考えでは『熱』を追い払うと症状は快方に向かいます。
麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)は気管支を広げ、痰を出しやすくして呼吸を楽にする咳に効く漢方のお薬です。

麻杏甘石湯は、麻黄湯の桂皮、麻黄、甘草、杏仁のうち身体を温め発汗作用のある桂皮の代わりに石膏を配合しています。

石膏は、熱をとり除き炎症を鎮める働きのある生薬で、麻黄、甘草、杏仁、石膏を配合した麻杏甘石湯は身体の熱を発散させ冷やす漢方薬になります。

春風邪は冬と比べて気温が高いため「寒」から「熱」に変わるスピードが早いです。「熱」に変わると体内に熱がこもりやすくなります。

「寒」から「熱」にすぐ変わる春風邪の場合。身体を温め続ける葛根湯は向いていません。「寒」から「熱」に変わったら、身体を冷ます漢方薬に切り替えるのが回復の近道です。

春風邪には身体を温める葛根湯ではなく、熱を冷ます麻杏石甘湯を選択肢のひとつとして覚えていてください。

麻杏甘石湯の効能

麻杏甘石湯は、咳込んで止まらないせき・気管支ぜんそく・気管支炎・感冒(風邪)の症状に効果的な漢方薬です。
  • 麻黄(まおう)・・・マオウ科のシナマオウの茎を乾燥させたもので、気管支を拡げてせきを止める作用があります。
  • 杏仁(きょうにん)・・・バラ科のアンズの種⼦で、痰をだしやすくする作用があります。
  • 甘草(カンゾウ)・・・マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもので、腫れを緩和する抗炎症作用があります。
  • 石膏(せっこう)・・・天然の含⽔硫酸カルシウムが原料の生薬で熱や腫れをしずめる作用があります。

 

 

ご参考になれば幸いです

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